「難しい」を取り除く私流のメイキング、JR北小谷駅 ◆


前回紹介しました、JR只見線早戸駅の駅ノートメイキングは、思いの他たくさんのコメントを頂きました。
単純にキャラの上手い下手という評価ではなく、単色表現に関して評価をいただきました。
本当に嬉しいことです★
私のようにキャラに自信にない場合でも、背景の描き込み次第で挽回できるという事が分かりました。

さて、そんな背景ですが、皆さん口をそろえて「背景は難しい」と仰います。
私としてはキャラの方が背景なんかより数倍、手強いのですけどね・・・【笑】
では、なぜ難しいと感じるのか?
というわけで、先日、知人の絵師さんに実際に横で描いてもらいました。
ちなみにその人も背景は苦手だそうで、私の持ってる「パースの描き方の本」を貸してあげました【笑】

そして、よくわかりました。
背景がなぜ難しく感じる、その理由が!

今回はそんな「難しい」を取り除く私流の背景の描き方で、駅ノートメイキングを紹介します。

まずは、元の写真。
何の変哲もない、田舎の駅のワンシーンです。



ここはJR大糸線の北小谷駅です。
夏のムッとする草木、夏の青空、そして水色の屋根とフェンスが少しだけ涼しげな感じがします。

「では、描き始めましょう!」



と、あせった貴方!
きっとそれは「お絵描き」ではなく「模写」です。

お絵描きでは「描く前に大切な事」があるんです。
この写真見て、どう思いました?何か感じました?
「あぁ、駅舎がなんか水色できれいだなぁ」とか、「山が近いんだなぁ」とか、「こんな駅に列車来るんかな」とか。

今回は実際に、私が旅して立ち寄った駅なので、写真以上にいろいろなことを感じました。
背景を描く上で、実際に自分がその場所で一番伝えたいことを意識します。

例えば、写メ。
みんなに見てもらおうと写メを撮った時って、無意識に構図にこだわったりしませんか?
あれって、見せたいものを、より人に伝えたいからだと思うのです。

背景を描くのも写メと同じことが言えます。
忠実に再現するよりも、表現したいものをアピールして描くようにします。

今回、私はこの駅に降り立ち、こんなことを感じました。

「山が近くに迫っているなぁ。青々とした山が描きたい!」
「流行っているアニメ、スマイルプリキュアの黄瀬やよいちゃんとコラボしたらおもしろいかな!」

「えっ、そんなこと思ったの?」ってがっかりされるかもしれません【笑】
別に評論家が言うような難しいお題目を並べることはしませんので。
ただ、純粋に感じたままをイラストにしたいのです。



下書きの遠近法、これがずれるとすべてが狂う! ◆

何度も言いますが、模写じゃなくお絵描きですから!
「写す」ことばかり考えていると失敗しますよ!!

では、はじめましょう!
まず風景を見て、中心を決めます。
これが一番大切です!
中心も決めず、いきなり手前のフェンスや、駅の屋根辺りから描き出した貴方!
失敗しやすいです!
私の知人の絵師さんも、正にこのパターンでした!
中心も決めずいきなり描き始めるものだから、そのうち線と線のつじつまが合わなくなってきて、ごまかしきれなくなるのです。



中心を取ること!
現地で描く場合も、写真を見ながら描く場合も同じです。
美術の話をすると、遠近法では必ず中心になる点があります。
平行な線路を直線に延ばしたり、ホームを端直線に延ばしたりすると必ず交わる点がある。
これが中心点(消失点)になります。
つまりこういうことです。



消失点から、放射状に補助線を引き、その線上に配置する!
補助線が増えてくると、一体何の線だったか分からなくなるので、横にちょっとメモ書きしておきます。
私の失敗談ですが、レールの線つもりで枕木を描き込んでたら、実はホームの端っこの線だった!
とか、線を取り違えることもあるのです・・・【泣】

今回は駅舎もホームもレールも、平行に並んでいるものは同じ消失点から補助線を引きます。
もしも同じ補助線上にないときは、別の消失点を作り補助線を引くようにしましょう。
同じ絵の中にたくさん消失点があってもかまいません。
坂とかになってなければ、必ず同じ地平線上に消失点が来ます。

次に縦の線を入れていきます。
奥のフェンスや駅舎屋根、柱の部分です。



柱が地面と接する部分も、消失点からきっちりと補助線を引いて、その捕縄線上に着地させる!



奥の建物の屋根も消失点から引きます。
こんな短い線でもきっちりと引くだけで完成度があがります。
フェンスの縦の線は、そのまま真下に引くだけです。
美術的には間違いかもしれませんが、ここではこれ以上は求めません【笑】
フェンスの縦の棒の間隔は奥を密に、手前は広めに。



駅舎を少し描き込んでいきます。
駅舎の外壁の板1枚にしても、奥へ延びるものは必ず消失点からの補助線上に乗せます。

奥行きは消失点からの補助線上に、縦や横の線は気にせずまっすぐに引く!



少しずつ、細かいところまで書き込んでいきます。
標識や駅舎の入り口の部分などです。
さてここくらいまで描き進めると、つじつまが合わない矛盾が出てきます。
製図のように、きっちりと計って描いているわけではないので、ずれが出てくるのは当然です。

どうするか?

その時は、見た目でおかしくない様にごまかしてください【笑】

このイラストの場合、駅舎の入り口が写真とはずれています。
でも気にしない、気にしない!
これは、お絵描きなんですから★



文字を入れる場所を決めておきます。



カーブレールを描きます。
この写真ではレールが奥のほうでカーブして、やがて草木の隙間に消えていきます。

自然なカーブってすっごく難しいですよねぇ!
イラレのベジエ曲線のようなものが、フリーハンドで描けるものではありません。

そんな方には、曲線定規という便利な道具を使うと一瞬です!
私は、補助消失点を地平線上にたくさん打って、そこから直線を引いてカーブを描く作戦で挑戦しました。



どんどんと、背景の細かいところを描き足していきます。



キャラの立ち位置を決める!
ここで大切なのが、背景との比較です。
簡単に言うと、フェンスの高さってキャラの腰の位置なの?って事です。
これは実際に行って測るか、見た感じで考えてください。
私は実際に、フェンスに寄りかかったりして、自分の体で測りました【笑】



今回は、スマイルプリキュアの「黄瀬やよい」を描いてみたいと思います。



まぁ、こんな感じでしょうか!?



キュアピースに変身する黄瀬やよいちゃん。
ピース、ピース!!



文字をざっくりと書きます。
文字に肉付けすることを考えて、少し大きい目に描きます。



今回は、ラブ&ピース風に、ハートをあしらった、もこもこペンで字を書いたように表現したいと思います。



これで下書きは終わりです。
写真と見比べて、まぁまぁ同じように見えたらOKです!!



書き込みと手抜きのメリハリで、時間短縮ペン入れ ◆

私のように一色表現の場合、ペン入れはあまり時間をかけたくない工程です。
特に、後で塗りつぶしてしまうようn部分は、手抜きます。
ペンはHI-TEC-C coletoの0.3ミリ、0.4ミリ、0.5ミリのペン先を使い分けます。
基本は0.4、細い書き込みや塗り込みは0.3、太いところや強調したい線は0.5を使います。
では、まずはキャラからペン入れします。



今回のイラストはキャラが小さいので、目や顔の輪郭は0.3でかなり慎重になぞります。
建物は後で塗り込んだりするので、0.4で手抜きます。



手前は太く、奥は細く・・・
意識はしますが、塗り込みのタイミングで調整するので、今は特に気にしなくて大丈夫です。



ホームの端の線など、絶対に他の線とまぎれてはいけない線は、この時から太めに描いておきます。
場合によっては0.5でしっかり描くこともあります。



奥のほうは0.3か0.4ミリで、なぞるだけ。
黒いところも、ペン入れの段階では塗り込んではいけません。
下絵を消すときに、にじんだり、インクが消えてしまうからです。



ペン入れの工程から定規を使わないのが私流。
ですので、レールの平行線は狂わないように、慎重に描きます。



文字の輪郭は0.5。
ペン入れが終われば消しゴムで下絵を消しますが、ちゃんとインクが乾いているか確認します。
現地で描く時は時間の都合もあるので、先に書いた部分から消していきます。
鉛筆の下書きが消え、すっごいしょぼい絵だけが残ります。





塗り込みだけで挽回、これが一色表現の醍醐味 ◆

絶対に他の線とまぎれてはいけない線は、はっきり表現する!
どこから塗ってもいいのです、手前から行きます。



ホームやフェンスの線は、後で塗リ込んだときでもはっきり分かるように強調しておきます。



明らかに濃い部分は、ベタ塗りします。
ベタといっても、0.3か0.4の掛け網で何度も描きます。
100%塗りつぶすなら0.5でもいいですが、ちょっとでも隙間ができる時は0.5では上手く表現できません。
ここは0.3か太くても0.4で何度も何度も掛け網で塗り込んでいきます。



板を表現したいと思います。
実際、写真で見ても、ここはこんなに露骨な板ではありません。
ただの板壁に白くとそうしただけです。
でも、これは私のお絵描きの楽しみ方なんですが、「これは板だよ!木で出来てるんだよ!」っていうのを表現したいのです!
見てる人が「あっ、木造だ!」って、見てくれたのなら、それが私の狙い通りなのです。
人によって、ここは自由でいいと思いますよ★
お絵描きは自由です!!



実際は外壁や床に使うようなまっすぐな板は、光をこんな感じに反射することはありません!
絶対にあり得ません。
でもこれもお絵描きの楽しみの一つ。
私のようにあり得ない表現で遊んでも、きっちりと木目を描いても、自由でいいと思います。
前に描いた銀水駅のように、木目で板を表現するのも味のある絵になりますよ!

拡大するとこんな感じです。
塗り込みも、よく見ると掛け網でしょ?



屋根も同じように塗っていきます。
屋根の線が細く感じるので、ここで塗り足しておきます。
ペン入れで手抜いても、塗りの時にこうやって修正できます。



絵が寂しいのは、草木を塗っていないからだ!
手前の下草を塗ってみます。
まずはさっさっと、ベースの色を表現します。
見たとおり、かなり適当です。



次に、感覚で、「ここは濃いかな?ここは薄いかな?」とか想像しながら、ペン先をランダムに動かします。
文具ショップでペンの試し書きするときに、ごにょごにょ描きますよね?
あの感覚です。



描き進めるとこうなります。
誰がやってもこうなります。
それでもダメだって思う方は、試し書きを何度か書いているうちに分かってきますよ。



フェンスにも少し手を加えました。
このフェンス写真でよく見ると、結構さびてて汚れてるんですよね。
汚い感じで塗り込みます。



奥の下草も同じように表現します。
下草や木は、どれ一つ同じもはありません。
何の法則なく塗り込むのが、自然なのです★



キャラの髪の毛を塗ります。
鋭い方はお気づきかと思いますが、ここで大問題があります。
この、黄瀬やよいちゃん、髪の毛が黄色です。
キャラ設定はあざとイエローですが、髪の毛は、黄色の強いオレンジイエローです【笑】
でも、私が使っているペンは青。
HI-TEC-C coletoのアクアブルーです。

「青で黄色が表現できるわけないでしょうが!!」

他にもHI-TEC-C coletoのピンクやチェリーピンクで絵を描くこともあります。
黒を表現するのに、「ピンクをいくら濃く塗っても黒になるわけないでしょうが!」
ちなみに、暗いところが表現できないと奥行きをあまり感じないイラストになります。
同じ絵でも鉛筆や黒ペンで描く絵は、明暗がはっきり表現できるのでずっと上手く仕上がります。

でもこれも私のこだわりで、特殊な画材でもなんでもない、普通に売っている色ペンの限界に挑戦したい!
これはピンク一色で駅ノートを描き始めた時から、今もずっと変わりません★
ただ単純に楽しいんですよ、色ペン一色表現!

話がそれましたが、青で黄色を表現してみたいと思います。
こうなれば、もうお分かりかと思います。
0.3で掛け網もなしで、軽く薄く引くだけ。
そもそも髪の毛を塗らないって手段もありですが、それはあまりに寂しい・・・
例え黄色でも、髪の毛のてかり具合や質感は欲しいのです!
私はわがまま!?



髪の毛も服も何とか塗れました。



服や靴下の影などを塗りキャラはこれでOKにしましょう。



奥に生えている木を塗ります・・・
おっと、濃く塗りすぎた。
ランダムにやりすぎたかな。
本当ならもう少し控えめに塗って、最終的に背景の山と同化するつもりでしたが、失敗ですね【笑】
最後に山を塗るときに、気をつけないといけません。



枕木を忘れていました・・・【笑】
枕木は本当ならもっと間隔が狭くて、枕木自体ももっと幅が狭いです。
でもこんなたくさん描くの面倒だし、ぱっと見て「これは枕木だ!」って分かれば十分です。
だいたい本数を数えて計算して配置するなんて、そんな模写の技術は持ち合わせていません【笑】
自信もって手抜きます。



カーブレールの枕木ですが、私なりの描き方があります。
枕木をわざとカーブ内側に傾けて描きます。
列車がカーブの端から、車体を傾けながら突然現れる雰囲気が想像できます。
こんなマニアックな事分かってもらえないでしょうが、そんな事を妄想しながら描くのが楽しいです。



軽くペン入れします。



後は最初の板の描き方と同じ方法で、枕木を塗り込みます。



ホームも塗ります。
アスファルトは黒ですが、ここはわざと塗り込みません。
縁だけを濃く濃く塗り、そのほかはまったく塗らない、あり得ない陰影で塗ります。
ここでホームをすべて塗りつぶしてしまうと、全体を見た時に塗りつぶしと白のバランスが悪い気がしたのです。



気分転換に、文字を塗りましょう。
これは完全に個性の問題です。
理屈も法則もなく、思いのままに塗るといいです。



最後の砦、背景の山の塗りです。
今回、草木とは違った塗り方をしてみます。
あっ、草木と同じ塗り方でも山は表現できますし、ぜんぜん大丈夫ですよ【笑】

まず山の谷の部分を先に濃く色つけます。
実際は谷ではなく、木々の間にできる窪みの部分です。
やり方は、試し書きする時のごにょごにょ書き作戦

と、同時に点字ブロックも。
これは、完全に遊んでみました。
点字ブロックはその名の通り丸い点々の集合ですが、今回は格子模様にしてみました。
奥と縁を塗ると、格子模様でも、普通に見えるのが驚きです。



山の塗りですが、さっき谷を作ったので、次は山肌をさっさっさと塗っていきます。
下草の塗りと同じ方法です。
日のあたる明るいところ、ここは暗いところかな、って意識しながら。
後は暗いところを極端に暗く塗り込みます。



全部塗るとこんな感じ!
奥の木を塗りすぎた失敗は、山と木の間に白いスペースを作ることで何とか挽回できそうです。
山の塗りをわざと濃くしたのは、近くに山が迫っている感じを出したかったのです。
前に描いた早戸駅の塗り方でも十分ですよ。

はい!完成!!



おっと、最後にサイン、サイン!
あっ、キャラの足元に影を入れるの忘れた!
浮いているみたいに見えるじゃないか!
ので、最後にさっと書き足して、おしまい★





いかがでしたでしょうか?
私なりのお絵描きの楽しみ方、伝わりました?
そうあんです、「難しい」を取り除く私流の背景の描き方って、このことなのです!
決まった形にとらわれず、お絵描きをする事。
ぱっと見た人にでも、明確に何かを伝える事。
そして何より自分が楽しい事。

今回も私流を紹介しましたが、もちろん賛否両論があると思います。
決して私の描き方が正しいなんて、これっぽっちも思ってません。
お絵描きなんて、本当に自由なのですから、自分なりの描き方もあると思います!
いろんな描き方や表現方法の一つに、こんな描き方もあるんだなぁって思っていただければ嬉しいです!


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